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第4回 スーツ生地の基礎構造——ウェイトを知る

  • web7455
  • 9月23日
  • 読了時間: 3分



全6回にわたるシリーズ「スーツ生地の基礎構造」、第4回は「ウェイト(重さ)」を掘り下げます。生地の重さは、着心地のみならず、見た目の印象やシルエットの安定感までも左右する重要なファクターになります。



g/m と oz/yd — ふたつの単位

  • g/m(グラム・パー・メートル) ヨーロッパ圏で主に使われる単位で、生地幅148〜150cmの1m分の重さを表します。

  • oz/yd(オンス・パー・ヤード) 英国・米国の伝統的な単位で、1ヤードあたりの重量をオンスで示します。


両者は慣習的に使い分けられてきましたが、目安としては以下の対応表が参考になります。

g/m

oz/yd(目安)

230g

約7oz

270g

約9oz

300g

約10oz

340g

約12oz

370g

約13oz

400g

約14oz



季節ごとの適正ウェイト

シーズン

g/m

oz/yd

特徴

春夏向け

230〜270

7〜8

軽量で通気性が高く、爽快感

秋冬向け

300〜400

9〜13以上

保温性・耐久性に優れ、落ち着いた印象

トランスシーズン(3シーズン対応)

260〜300

8〜9

汎用性が高く、最も使いやすいゾーン

重量級(コートなど)

420〜570

14〜15

圧倒的な重厚感と存在感

ただし、糸を2本、3本と引き揃えて撚った強撚糸を用いて織るフレスコ生地や、近年は「軽量フランネル」や「ライトツイード」など、上記の表に該当しない生地も増えており、ウェイトだけでの判断は不十分です。織組織、糸の太さや撚り、加工方法を総合的に見極めることが求められます。




歴史に語り継がれる "極端なウェイト" の生地たち

  • 極端に重い例:Fox Brothers のヘビーフランネル 英国の名門 Fox Brothers は、かつて 600g/m を超えるヘビーウェイト・フランネルを製織していました。圧倒的な落ち感と仕立て映えは比類なく、クラシックな英国スーツの象徴でもありました。現在では実用性や需要の観点からほとんど流通していませんが、テーラーやヴィンテージ市場では伝説的な存在です。

  • 極端に軽い例:御幸毛織の軽量ウール(昭和期) 日本の御幸毛織は1950〜60年代に、200g/m前後の超軽量ウールを開発しました。シャツ地に近い軽さを持ちながらもウールの質感を備えた画期的な生地でしたが、耐久性や仕立ての安定性に課題があり、定番化には至りませんでした。現在ではポリエステル糸を30%前後混紡し、185g/mの軽さを実現した超軽量素材も開発されておりますが、こちらも耐久性や仕立ての安置性の観点からあまりお勧めできません。


こうした極端な試みがあったからこそ、230〜400g/m前後のウェイトが「中庸の基準」として定着した背景があります。



重量がもたらす仕立て映え

軽い生地は、柔らかく軽快なドレープを生み、夏の装いに快適さをもたらします。しかし、シワが残りやすく、構築的なシルエットを保つには不向きです。 一方、重い生地は、強い落ち感が魅力で、スーツの輪郭をしっかりと保ち、風格のある仕立て映えを実現します。



「重さをまとう」という選択

同じ織組織であっても、生地のウェイトが変われば装いのメッセージは大きく変わります。軽快さを求めるのか、威厳をまとうのか。季節や場面、そして自分がどう見られたいかに応じてウェイトを選ぶことは、装いを「言語」として操ることに等しい行為です。

「重さをまとう」という意識が、装いに奥行きと力強さを与えてくれます。










脇山 晃樹 1998年、東京都出身。バンタンデザイン研究所ファッション学部を卒業後、大手紳士服メーカーのオーダー部門で7年間勤務。現在はDrapper Hopeでフィッターとして活動。
脇山 晃樹 1998年、東京都出身。バンタンデザイン研究所ファッション学部を卒業後、大手紳士服メーカーのオーダー部門で7年間勤務。現在はDrapper Hopeでフィッターとして活動。

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