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季節を纏う生地——ツイードという温もり

  • web7455
  • 44 分前
  • 読了時間: 5分



いつもDrapper Hopeのブログをご覧いただきありがとうございます。今回は、これからの季節にぴったりな素材「ツイード」についてお話ししていこうと思います。冬支度のお買い物の参考になれば幸いです。



ツイードとは

ツイードは、主にウールの太い紡毛糸で織られた分厚い生地で、表面はややざらつきがありながらも、どこか温かみを感じさせる素材です。スコットランドの厳しい自然の中で育った羊の毛から作られたことから、防風性・防寒性に優れ、まさに「自然が生んだ防寒着」と言える存在です。ヨーロッパでは、ツイードのジャケットを親から子へ、そして孫へと受け継いでいく家庭もあるほどで、その丈夫さと永く愛される普遍性が魅力です。

織り方は綾織りまたは平織りで、生地の表面に織り目がしっかりと見えるのも特徴。どこか素朴で、しかし味わい深い表情を持っています。



名前の由来と歴史

ツイードのルーツは18世紀のスコットランド。もともとは各家庭で手紡ぎした糸を手織りで仕立てた「ホームスパン」こそがツイードの原点でした。時代が進むにつれ、量産が可能になり、現在では機械織りの生地も含めて「ツイード」と呼ばれるようになりました。


その名の由来には二つの説があります。ひとつは、スコットランド南東部を流れるツイード川(River Tweed)にちなんだ説。もうひとつは、ロンドンの商社が伝票に“twill(綾織り)”と書くべきところを誤って“tweed”と記してしまった、という偶然の説。どちらにしても、この生地がイギリス文化に深く根づいてきたことを物語っています。




代表的なツイードたち

ツイードと一口に言っても、その土地ごとに個性はさまざまです。ここでは代表的な4種をご紹介します。



1. ハリスツイード(Harris Tweed)


スコットランド西方のハリス島を中心とするアウターヘブリディーズ諸島で織られるツイード。最大の特徴は「ケンプ(死毛)」と呼ばれる白髪のような硬い毛が混ざること。これにより、ハリスツイード特有の素朴で荒々しい風合いが生まれます。

有名な“オーブ&クロス”のラベルは、ハリスツイード協会による品質認定の証。このマークをつけるためには、島内の住民による手織りであること、さらに島内での整理加工が義務づけられています。厳しい基準を守り抜くことで、ハリスツイードは「世界で最も信頼されるツイード」として知られています。


Harris Tweedのスワッチ


2. ドニゴールツイード(Donegal Tweed)※ドネガルツイード


アイルランド北西部、ドニゴール州で生まれたツイード。緯糸にカラー・ネップ(節糸)を使用することで、表面に赤・青・黄色などの斑点が散りばめられたような表情になります。まるで冬の曇り空の中に、虹のかけらを閉じ込めたような独特の風合い。

膨らみのある糸によってややゴワつきはあるものの、見た目にも温かく、どこか牧歌的な印象を与えます。


ドネガルツイードの参考画像


3. シェットランドツイード(Shetland Tweed)


スコットランド北端・シェットランド諸島で作られるツイード。ふんわりとした軽さと柔らかさが特徴で、スポンジのような触感を持ちます。セーターの素材としても有名なこの羊毛は、寒冷な海風にさらされることで、軽くても高い保温性を備えています。

染色をせず、羊の自然な色味を活かした生地も多く、ナチュラルな温もりを感じられます。ツイードの中ではやや珍しい「軽やかさ」をもつ存在です。


シェットランドツイードの参考画像

4. チェヴィオットツイード(Cheviot Tweed)


イングランドとスコットランドの国境地帯、チェヴィオット丘陵に生息するチェヴィオット種の羊から作られたツイード。毛質は強くハリがあり、光沢感もあるため、ツイードの中ではややフォーマル寄りな印象。

柄は大胆で明るく、ブリティッシュらしいクラシックなチェックが多く見られます。その耐久性から、もともとはハンティングやライディング用のスポーツジャケットとして重宝されていました。



ちなみに、ツイードと聞くとこうした英国・アイルランドの伝統素材を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、もうひとつ忘れてはいけない存在がファンシーツイード(Fancy Tweed)です。


いわゆる「シャネルツイード」と呼ばれるもので、複数の色糸や意匠糸(ラメ糸、ブークレ糸、リボンヤーンなど)を組み合わせて織り上げた、装飾性の高いツイードです。


もともとココ・シャネルがメンズのツイードジャケットにインスピレーションを受け、女性のための軽やかなツイードスーツとして再構築したことが始まりと言われています。


伝統的なツイードが“寒さをしのぐための素材”だったのに対し、ファンシーツイードは“装うことを楽しむ素材”。


現代ではメンズでも軽やかなジャケット素材として用いられることがあり、秋冬のスタイルに華やかさと奥行きを与えてくれます。




ツイードの魅力とは

ツイードの本質的な魅力は粗野さと上品が共存していること。山岳地帯での実用服として生まれながら、今では英国紳士の象徴として愛され続けています。

手に取るとやや無骨で重みがありますが、仕立てると身体の動きに寄り添い、年々柔らかく馴染んでいく。長い時間をかけて完成していく素材。れがツイードです。


ツイードは、単なる「冬の生地」ではなく、時間とともに育つ布。丁寧に仕立てれば、10年先も、20年先も、表情を変えながらあなたの冬を温めてくれるはずです。








執筆者のプロフィール画像
脇山 晃樹 1998年、東京都出身。バンタンデザイン研究所ファッション学部を卒業後、大手紳士服メーカーのオーダー部門で7年間勤務。現在はDrapper Hopeでフィッターとして活動。

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