お気に入りのデニムを完全再現?|Atelier’D
文:脇山晃樹
皆さんこんばんは。南青山のDrapper Hopeでございます。
季節の変わり目を迎え、天候の不安定な日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今回は、Atelier’Dで制作した少し特別なデニムパンツをご紹介します。
テーマは、「お気に入りの一本を、もう一度つくる」こと。
以前のブログでは「Drapper Hope × Atelier’D」で制作したオリジナルのデニムパンツについてご紹介しましたが、Atelier’Dでは一から洋服を制作するだけでなく、お客様がお持ちの洋服をもとに、新たな一着をお仕立てすることも可能です。
今回お持ち込みいただいたのは、お客様が「世界一気に入っている」と話す一本のデニムパンツ。
シルエットや穿き心地が気に入っていて、同じものをもう一本欲しい。しかし、気に入った洋服ほど、同じものがいつまでも手に入るとは限りません。
そこで今回は、このデニムパンツをお預かりし、できる限りその特徴を残しながら、新しい一本を制作することになりました。
その制作過程を少し覗いてみたいと思います。
まずは、元のデニムに近い生地を選ぶ
最初の工程は、生地選びです。
一口にデニムといっても、その表情や穿き心地はさまざまです。
オンス(oz)と呼ばれる生地の重さをはじめ、糸の太さや織り方、色合いなどによって、柔らかなものから重厚なものまで大きく印象が変わります。
今回お預かりしたデニムは、比較的軽く、柔らかな穿き心地が特徴的な一本。
その風合いに近づけるため、今回は8オンスのデニム生地を選びました。
ただし、生地が決まっても、すぐに裁断へ進むわけではありません。

裁断する前に、一度生地を洗う
デニムを仕立てるうえで考えておきたいのが、洗濯による生地の変化です。
せっかく元のパンツに近い寸法で仕立てても、洗濯をしたあとに大きく縮んでしまっては、同じ穿き心地にはなりません。
そこで今回は、裁断前の生地にあらかじめウォッシュをかけ、その後、乾燥機でしっかりと乾燥させます。
完成する前に一度生地を縮ませておくことで、実際に穿き始めてから洗濯した際の大きな寸法変化を抑えるためです。
しかし、洗った生地にはシワや歪みが生まれます。
そこでアイロンを使いながら、縦糸と横糸の方向を確認し、「地の目」を丁寧に整えていきます。
地の目が歪んだまま裁断してしまうと、パンツのシルエットや穿いたときのねじれにも影響します。
同じように、ポケットの袋布に使用するスレキにもあらかじめ洗いをかけ、縮みを考慮しながら地の目を整えます。
完成してしまえばほとんど見えない部分ですが、洋服づくりでは、こうした下準備が仕上がりを左右します。
デニムパンツを解体せず、型紙をつくる
そして今回の制作で、最も特徴的なのがパターンの作成です。
通常、洋服は平面の型紙をもとに生地を裁断し、それらを縫い合わせることで立体的な形へと仕上げていきます。
今回はその逆。
完成しているデニムパンツから、その元となる平面の型紙を読み取っていきます。
もちろん、お客様が「世界一気に入っている」という大切な一本ですから、縫い目をほどいて解体することはしません。
パンツを傷つけることなく、前身頃、後身頃、ヨーク、ポケットなど、それぞれの形状を一つひとつトレースするように型紙へと起こしていきます。
立体になっている洋服から、元の平面を読み取る。
単純にウエストや股下などの寸法を測るだけでは、元のパンツと同じシルエットにはなりません。
カーブや角度、各パーツの関係性を読み取りながら型を抜き、そこへ縫い代や縫製に必要な合印を加えて、ようやく新しいパターンが完成します。
一着の洋服を見て、その設計を逆算する。
パタンナーとしての経験と技術が求められる工程です。
この技術があってこそ、デニムを完全再現することができます。
型紙から、再び一本のデニムへ
パターンが完成したら、いよいよ裁断です。
整えた生地の地の目に合わせて型紙を配置し、裁ち鋏を使って一つひとつのパーツを切り出していきます。
さらに、縫製するときの目印となる合印を入れれば、裁断の準備は完了。
ここからは、それまで平面だったパーツを順番に縫い合わせていきます。
少しずつパンツの形が見えてくるのも、洋服づくりの面白いところです。
そして、ネオバボタンやリベットなどの金属パーツを打ち込んでいくと、一気に「デニムパンツ」らしい表情へと変わっていきます。
「もう一度着たい」を、形にする-デニムを完全再現-
そして、完成です。
元のデニムパンツをもとに、一から生地を選び、型紙を起こし、裁断し、縫製する。
今回の制作は、単に「同じようなデニムパンツをつくる」というだけではありません。
洋服を長く着ていると、不思議と手に取る回数の多い一着が出てきます。
身体に馴染んだシルエットなのかもしれません。使いやすいポケットの位置かもしれません。あるいは、言葉では説明できないけれど、なぜかその服を着たときだけしっくりくるのかもしれません。
しかし、洋服は消耗着るほどに消耗していきます。
気に入って長く着るほど少しずつ傷み、いずれは同じ状態で着続けることが難しくなる。また、同じものを購入しようとしても、すでに廃番になっていることも珍しくありません。
そんなとき、必ずしも「次の似た服を探す」だけが選択肢ではないと思っています。
気に入っている一着そのものを手がかりに、次の一着をつくる。
そこには、新しい洋服を買うこととは少し違った面白さがあります。
デニムだけでなく、ジャケットやコートも
Atelier’Dでは今回のようなデニムパンツだけでなく、ジャケットやコート、婦人服など、お手持ちの洋服をもとにした制作についてもご相談いただけます。
「ずっと気に入って着ているけれど、かなり傷んできた」
「昔購入した服と同じシルエットのものが見つからない」
「この形をベースに、生地を変えてもう一着つくりたい」
そんな洋服がクローゼットに眠っていましたら、一度お持ち込みください。
まったく同じものを大量につくるのではなく、一着の洋服に残された形やディテールを読み取り、次の一着へとつないでいく。
Atelier’Dだからこそできる、洋服との付き合い方のひとつです。






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