国島毛織の魅力|尾州最古の毛織メーカーが作る日本のスーツ生地
- 5 日前
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スーツの生地には、それぞれに個性があります。
傾向としてイタリアの生地には、軽さや柔らかさ、華やかな色気があり、イギリスの生地には、しっかりとした打ち込みや仕立て映え、クラシックな雰囲気があります。
では、日本の生地にはどんな魅力があるのでしょうか。
今回ご紹介したいのが、愛知県一宮市を中心とする「尾州」で生地を作り続けている、国島毛織です。
国島の前身である国島商店が創業したのは1850年。
日本を代表する毛織物産地である尾州において、最も古い歴史を持つ毛織物メーカーです。
170年以上にわたって、この土地で生地と向き合ってきた。
そう考えると、一枚の生地にも少し違った見方ができるかもしれません。
Drapper Hopeでも取り扱っている生地のひとつですが、実際に仕立ててみると、その魅力がとてもよく分かります。
今回は、そんな国島の生地の魅力をお伝えできればと思います。
尾州という、日本を代表するテキスタイル産地
まず、国島についてお話しする前に、「尾州」という産地について少し触れていきたいと思います。
尾州は、愛知県一宮市を中心とした日本有数の毛織物産地です。
糸を作る。染める。織る。仕上げる。
生地を作るためのそれぞれの工程を専門とする工場が集まり、長い年月をかけて一つの産地を形成してきました。海外の方には、まだあまり馴染みのない名前かもしれません。
ですが、尾州は現在も国内で生産される毛織物の約8割を担う、日本を代表するテキスタイル産地のひとつです。
そして国島は、その尾州で1850年から生地を作り続けています。
日本がまだ近代化を迎える前から続く歴史。
その長さだけでも、国島というメーカーがこの土地と深く結びついていることが分かります。
なぜ、尾州で生地が作られてきたのか
国島毛織が170年以上にわたって生地を作り続けている「尾州」。
では、なぜ尾州はこれほど長く、毛織物の産地として発展してきたのでしょうか。
その理由のひとつが、水です。
尾州を流れる木曽川は、非常に水量が豊富で、なおかつ硬度の低い軟水に恵まれています。
実は、毛織物づくりにとって水はとても重要な存在です。
羊毛を洗う。糸を染める。生地を整理する。
一枚の生地が完成するまでには、さまざまな工程で大量の水が使われます。
特にウールは水や薬品との関係が仕上がりに大きく影響する素材です。
木曽川の軟水は、こうした毛織物の加工に適しているとされ、尾州のものづくりを支える大きな環境的な強みになっています。
国島も、尾州の優位性のひとつとして「日本一の軟水」を挙げています。
軟水は、毛織物の柔らかな風合いを生み出すうえで有利だとされており、木曽川の水は日本の中でも特に硬度が低い地域にあります。
さらに、産業に利用できるだけの豊富な水量がある。
つまり尾州には、毛織物を作るための水という、土地そのものの恵みがあったわけです。
水だけではない、尾州という産地の強さ
もちろん、尾州が優れた生地を作る理由は水だけではありません。
尾州には、紡績、撚糸、染色、製織、整理加工など、それぞれの工程を専門とする工場が集まっています。
一つの会社ですべてを行うのではなく、それぞれの専門家が得意な仕事を担い、互いに協力しながら一枚の生地を作り上げる。
この分業と協業の仕組みこそが、尾州の大きな特徴です。
だからこそ、糸の選び方や染め方、織り方、仕上げ方まで、細かなところにそれぞれの専門性が生きてくる。
尾州という場所そのものが、いわば一つの大きなテキスタイル工場のようになっている。
そう考えると、国島の生地も「国島という一つのメーカーだけで作られたもの」というより、尾州という産地に蓄積された技術や環境の上に成り立っていることが分かります。
国島毛織の生地を触ってみると
国島の生地を初めて触った方が、まず感じるのは「しっかりしている」ということかもしれません。一般的なウール地に比べて、経糸と緯糸の本数を多くし、高い密度で織り上げる。
そのため、生地にしっかりとした張りとコシがあります。
ただ、単純に硬いわけではありません。むしろ触ってみると、しっとりとしている。
この「張り」と「柔らかさ」が同居しているところが、国島の生地の面白いところだと思います。
見た目はかっちりしている。でも、着てみると堅苦しくない。私は国島の生地を説明するときに、「見た目はかっちりしているけれど、着心地は堅苦しくない」という言い方をすることがあります。
国島自身も、高密度で肉厚な風合いと、しなやかさや高い張り感を生地の特徴として掲げています。

なぜ、国島の生地はしっかりしているのか
その理由のひとつが、生地の「密度」です。
生地は、経糸と緯糸を交差させることで作られています。
この糸の本数や織り方によって、生地の表情や強さ、落ち感は大きく変わります。
国島では、一般的なウール生地よりも糸数を多く設定し、高密度な生地づくりを行っています。
そのため、生地そのものに力がある。ジャケットを仕立てたときにも、その力がシルエットに表れます。
肩から胸にかけての立体感。ラペルの返り。パンツのクリースライン。
こうした部分がきれいに立ち上がり、スーツらしい構築的な表情を作ってくれます。
スーツは、身体に合わせて作るものですが、同時に「生地で形を作るもの」でもあります。
そう考えると、生地の張りやコシというものは、単なる触り心地の話ではないことが分かります。


プロジェクタイル織機と、高密度な生地
国島の生地を語るうえで、もうひとつ興味深いのが「プロジェクタイル織機」です。
少し専門的な話になりますが、織機にはさまざまな種類があります。
国島ではプロジェクタイル式の織機も使われており、高密度でしっかりとした生地を作ることができます。ここで面白いのは、「昔ながらの織機だから良い」という単純な話ではないことです。
どんな生地を作りたいのか。どんな風合いにしたいのか。どんなスーツに仕立てたいのか。
その目的に合わせて、適した技術を使う。
長い歴史を持ちながらも、ただ昔のものを残しているのではなく、現在のものづくりに必要な技術として受け継いでいる。ここに、国島というメーカーの面白さがあると感じています。
「Made in Japan」の魅力
海外のお客様とお話ししていると、「日本のものづくりに興味がある」という声をいただくことがあります。
時計や自動車、陶磁器、家具など、日本には世界的に知られているものづくりがたくさんあります。
そして、テキスタイルもそのひとつです。
ただ、日本の生地というと、私たち日本人にとっては身近なものでありながら、その背景や魅力については、まだまだ知られていない部分も多いかもしれません。
その中で、尾州のように長い歴史を持ち、現在も生地を作り続けている産地がある。そして、その土地で1850年から生地づくりを続けているメーカーがある。
これらは、日本でスーツを仕立てることの一つの面白さだと思います。
せっかく日本でオーダースーツを仕立てるのであれば、イタリアやイギリスの生地だけではなく、ぜひ一度、日本の生地にも目を向けてみていただきたい。
普段何気なく選んでいる生地にも、長い歴史や、それを支えてきた産地とつくり手がいます。
それを知ることもまた、Made in Japanのテーラリングを楽しむ一つの方法だと思います。
クラシックだけど、堅苦しくない
国島の生地には、どこかクラシックな雰囲気があります。
しっかりとした張り。適度な重量感。きれいに立つシルエット。
こうした特徴は、クラシックなテーラリングととても相性がいい。
一方で、仕立て上がったスーツを着てみると、昔ながらの「重くて堅いスーツ」という印象とは少し違います。生地にしっかりとしたコシがあるからこそ、身体にまとわりつきすぎず、自然にスーツの形を保ってくれる。だからこそ、「見た目はかっちりしているけれど、着心地は堅苦しくない」というバランスが生まれるのだと思います。
今の時代にクラシックなスーツを着る。
そのときに大切なのは、昔の服をそのまま再現することではないと考えています。
現代の生活の中で、自然に着られること。そして、長く着たいと思えること。
国島の生地には、そうした現代のテーラリングにも合う魅力があります。
日本の生地だからこそ実現できる、品質と価格のバランス
日本の生地には、もう一つ面白いところがあります。
それは、品質に対して価格のバランスが取りやすいことです。
イタリアやイギリスなど海外の生地は、為替や海外情勢、輸送コスト、関税など、さまざまな要因によって価格が変動します。
一方で、日本国内でつくられる生地は、そうした海外との為替や輸送、関税などの影響を比較的受けにくい。
もちろん、原材料費やエネルギーコストなどによって価格が変わることはありますが、国内で長く生地をつくり続けてきた産地だからこそ、品質と価格のバランスを保ちやすいという面があります。
長い歴史を持つ産地で、職人の技術によって丁寧につくられている。
それでいて、品質に対して現実的な価格で選ぶことができる。
これは、日本の生地を選ぶ一つの魅力だと思います。
生地の品質や風合いだけでなく、こうした背景まで含めて選んでみる。
それも、日本のテキスタイルを楽しむ一つの方法かもしれません。
日本の生地を、実際に触れて選ぶ
生地の魅力は、写真だけではなかなか伝わりません。
同じネイビーでも、触ったときの柔らかさや張り、光の当たり方、生地を動かしたときの表情は、それぞれ違います。特に国島のように「張り」や「コシ」が魅力の生地は、実際に触れていただくと、その違いがより分かりやすいと思います。
Drapper Hopeでは、国島毛織をはじめ、日本・尾州の生地、イタリアやイギリスの生地など、さまざまな服地をご用意しております。
どの生地が一番良い、ということではありません。どんなスーツを着たいのか。どんな場所で着るのか。どんな雰囲気が好きなのか。
そこから、その人に合う生地を一緒に選んでいく。それがオーダースーツの面白さだと思っています。
日本でスーツを仕立てるのであれば、海外の生地だけでなく、ぜひ一度、日本のテキスタイルにも目を向けてみていただきたいと思っています。
普段何気なく選んでいる生地にも、産地やつくり手によって、それぞれ異なる個性があります。日本・尾州の生地を選んでみる。それも、日本でスーツを仕立てる一つの楽しみ方だと思います。
Drapper Hopeでは、国島毛織をはじめ、日本・尾州の生地、イタリアやイギリスの生地など、さまざまな服地をご用意しています。
生地について詳しく知らない方でも、もちろん大丈夫です。
実際に触れて、見比べながら、自分に合う一着を探していただけると幸いです。





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